┃┃┃┃┃┃┃ 小さな恋のメロディ?
オレは知ってしまったのだ…恐ろしい事実を…
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「女子といえばやぱり谷間! 包まれるときは至福の瞬間ッ、さぁ、オレをぎゅうっと抱き締めて〜っ!!
きゃーコンちゃん可愛いっ、堪らないわ〜ン、抱き締めちゃうゥ♪ Say!?(byマシュー南)」
「いきなり何言ってんだ、オメーはよ」
ちょっとしたジョークも通じず、ゲシゲシとオレのプリティフェイスを踏みつけた一護が言う。
「な、なにすんだっ」
じたばた暴れるけれども、ぬいぐるみの身体じゃ何も出来やしない。一護の臭い(気がする)足の下でもがき続けるオレを、ひょい、と助けあげてくれた人が居た。
女神かッ、と瞳を潤ませて見上げると
「黒崎、弱いもの苛めは止めなよ」
雨竜が険しい顔で一護に物申していた。
「ちっ、女子じゃねえ…って当たり前か…」
最初から、本日のお客様は石田雨竜だ。女子じゃない。って言うか、オレは弱いものじゃねえ。
小さい舌打ちを聞き取って
「…コン君、なんだか身体が潰れてる気がするよ? 綿の補充してあげようか」
真顔でカバンの中からソーイングセットと中綿を取り出す眼鏡。
「なんでもございませーん!」
壁にぴったり張り付いたオレを見て残念そうな顔をした雨竜は、一護に視線を移す。
「ったく、何言ってるんだか。毎度の事ながらお前が解らん」
一護はベッドに座って、面倒くさそうに雑誌を捲りながら言う。床に座らされた雨竜は、オレと一護を交互に見て、視線を落とした。
「…一護の部屋に女子が来るはずもねーしなぁ。オレを癒してくれる天使ちゃんはどこに居るのだろうか」
うるうると手を合わせて言うと、一護が気色悪そうに見てくる。
「お前、その女好きどうにかならないか?」
「ならん!」
「…そ」
気合十分に返したオレに、顔を顰めた一護は言う。
「って言うか、コン邪魔。お前どこか行ってろ」
「邪魔ッ?! こんなにプリティでミニマムなオレを捕まえて何言ってるんだ一護!」
「や、ミニマムって言うにはお前でかいし。」
「雨竜! 一護あんなコト言ってるゾッ!」
「…えーと、何で僕呼び捨てにされてるのかな?」
「問題はそこじゃね――っ!!」
「あ〜もう、うるせぇなお前…」
立ち上がり何をするのかと思いきや、事もあろうにオレの頭を鷲掴みにした一護は、押入れに俺の身体を突っ込む。
「ココにいろ。しばらく大人しくしとけ」
例の怖い顔の一護はそのまま襖を閉めてしまう。
「やぁぁぁぁっ、暗いッ狭いッ怖いッ!!」
「うーるーせ――ェ」
外から一護の声がする。
「動物…? の虐待は止めなよ黒崎」
ピントがズレた雨竜の諌める声もする。
――どうでも良いから出してくれー!
じたばた暴れてみたが、どうにも俺の手ではうまく襖を開けられない。って言うか、構造的に中から開けるようには出来ていない。どうしよう、と座り込んだオレの耳に、二人の声が聞こえてきた。
「お前もうるせェよ」
「…んっ……ちょ…!!」
続いて聞こえる布ズレの音。
――ちょ、ちょっと待てーっ!?
な、何が始まった?!
魅惑の桃色タイム〜♪ってお前ら男同士だろうがッ!!
一人ボケ一人突っ込みも完璧なオレ様は、大きく暗闇でリアクションして耳を襖に貼り付けた。
「さき、黒崎っ…だ、ダメだよ」
「あぁ? 今日は遊子も夏梨もオヤジもいねぇから良いじゃねえか」
「良くないって、コン君が…!」
どさっ、という音がする。続いてくぐもった雨竜の声。一護の声は、しない。
「――ぁ…ん、ダメだってば黒崎…」
次第にその声が甘く――って、オイ! なんだコリャ!
聞いちゃいけないような、でも聞きたいような、男同士のなんて聞いても面白くないだろう、と思いながら好奇心は押さえられない。
よく見ると、先ほど暴れた成果か襖がほんの少し開いている。身体を移動させて片目で覗くと…雨竜の上に覆い被さっている一護の姿が見えた。
とは言っても全身が見えるわけではない。
見えているのは、足だけ。
――つまらん。
すっかり覗き見る気満々だったオレはがっくり肩を落とした。
なにやら抵抗していた雨竜の力が抜けたのが見える。
低く囁いている一護の声は聞き取れない。でも、その声が妙に愉しげであることは解る。
大人に、大人になってたんだな一護…!!
ほろり、と涙を流しながら思っていると、手をかけていた部分に力が入ってあれだけ暴れても開かなかった襖が何の因果か開いてしまった。
ドスン、と落ちたオレは恐る恐る顔を上げる。
慌てたように身体を起こした雨竜のシャツが乱れている。
胡坐をかいて床に座り込んだ一護は…とっっっても不機嫌だった。
「あ、あははははは」
乾いた笑いを漏らすオレを物凄い顔で睨みつけ、一護は頭を掻き毟る。
「あ〜ッ! イライラするっ」
「溜まってるのか?」
つい突っ込みを入れると、真顔の一護は大きく頷いた。
「おう、もう限界」
「…くっ、黒崎?!」
裏返った声の眼鏡を指差して、真面目に一護は言う。
「だってこいつ、ヤらせてくれねーんだもん」
「―――っ!」
ピクリ、と眉間にシワを寄せた雨竜は、そのまま絶句する。
そりゃそうだ。いきなり他人にそんなこと告白されても困るだろう。
「…そ、そうか…」
ストレートに言われては、オレ様としても返答の仕様がない。
「お前ら、デキてたんだな…」
そうか、俺の知らない間に…と思いながら腕を組む俺を眺めていた一護は口を開く。
「ンにゃ。デキてなんて居ないぜ」
「は?」
「…え・・・?」
一護の言葉に、オレも雨竜も呆気に取られる。
――もしかしてっ、感情抜きの大人な関係?!
そこまで大人になってたのかよ、一護!
オレは悶々としてしまう。気付くと、乱れた服を直すことも忘れ呆気に取られたような顔をしていた雨竜が怒った様子で立ち上がった。
「あ…あぁそうかい。君と僕がデキてなんてないよな。それは当然だ。
帰る、僕は帰るよ」
ボタンを止めながらカバンを引っ掴んだ雨竜の手を一護が握って止める。
「何で帰るんだよ」
「何で? 君、自分の発言も覚えてないのか」
ムッとした顔で言う雨竜と、何がなんだか解らない、という顔の一護の足の下でオレはあたふたしていた。
喧嘩しないで!
一護が阿呆なのは今に始まったことじゃねえ。雨竜、許してやってくれ。
ひたすら慌てていると、一護がまた無自覚な発言をする。
「だって、事実出来てないじゃんよ。お前、いっつも良い所でダメとか言いやがって…」
――…黒崎一護。デキてるって言うのは、そういう意味じゃない。
多分、オレと眼鏡が同時に思ったのは同じコト。
ぽかん、と口を開けた雨竜の顔が赤くなる。オレは、あまりに莫迦らしくてやってられなくなった。
一護と雨竜はデキていて、しかも発情しちゃうような間柄らしい。
そんな恐ろしい事実、誰にも言えるはずがなくて、オレの小さな胸は張り裂けそうだった。
10000Hitリクエスト、石棚様より「イチウリ+コン」
当初書いていたラブ☆コン2が、明らかにコンウリ臭かったので、ひとまず放置して書き直しました。
コンのテンションって、やっぱり難しいですね。でも好きなので、なんとか書けるようになりたいです。
頑張ってもリクエスト内容に添えているとは思えません(汗)
リテイクOKですので、もっとこういうのー!と言うのがありましたら申し付け頂ければあり難く…!
1万打、有難うございました!!